KORGガジェットの必須のツールといえば、「DeeMax」。簡単に音圧を稼ぐことができて超便利なツールです。iOS版でも真っ先に追加購入した、プラグインです。
しかし便利なものには落とし穴もつきもの、今日はそのあたりの事について書いてみたいです。
気持ちイイほど音圧上がります
マスタートラックに「DeeMax」を挟んで、レバーをグググっと上げていくだけで音圧がどんどん上がっていきます。音の存在感が上がって前に前に出てくる感じですね。どんどん音圧を上げているのに、全体のバランスも崩れることがありません。
どうやらこいつは、各音域の音圧を感知して調整しながら上げていっているような感じです。なので変な上がり方をしません。
あんまり気持ちいいんで、ついつい上げてしまいがちになってしまします。
しかし音量を底上げしていくということは、小さい音と大きい音との差がだんだん無くなってきて、一番聴いてもらいたいところの印象が薄くなってしまうこともあります。
後半、ドッカーンと行くつもりが、出だしからドッカーンといってしまって、聴かせどころのインパクトがなくなってしまうこともあるんですよね。
使い方のセンスが問われる
今回作ったクリップ、「ラプトル」でその失敗をやらかしてしまっていました。
最初、ベースのフレーズの後に少しずつ音が増えていくんですが、最初から音圧を上げすぎてしまって、後半の盛り上がりが思っているほどの効果を生んでいませんでした。
それと中間部のピアノソロの部分は静かに語りかけるような感じなのに、全体を底上げしているので、けっこうな勢いで迫ってくるような感じなってしまっていました。
確かに、全体の底上げをすることでインパクトは強くなるのですが、音楽的にどうかということを考えてみました。早い話が、唐辛子やタバスコをたくさん入れれば刺激は強いですが、誰もがそういうのを好むわけではないですよね。そういうのが狙いなら別なのですが...。
もちろん音楽は、まず自分が楽しむためにあるんですが、自分以外の人も楽しめるような客観的なセンスも必要ですね。
DeeMaxのような簡単便利な物って、ついつい過剰に使ってしまいがちになってしまいます。聞いてもらいたいがために、過剰な方向に走ってしまいがちです。特に今回のようにダイナミックレンジを幅広くとりたい場合は要注意ですね。
最終的に各トラックをコンプレッサーで調整して、マスタートラックのDeeMaxは、当初よりも「薄ーく」(018くらいのレベル)でかけて使用しました。これを通すことで音圧を上げるというよりも、全体的にまとまってくれるところを利用しました。
ラウドネスレベルについて
ここでいうラウドネスレベル(LKFS/LUFS)というのは、音楽全体を通じて人間が感じるの音の大きさの平均値です。
ピークレベルが「0」近くになってもそれほど音が大きく感じなかったり、反対にピークレベルがそれほど高くないのに音が大きく感じることがあります。
人間の耳の特質上、低域よりも高域のほうが聞き取りやすいので、高音域が多いとピークレベルがそれほどでなくても音が大きく感じたりします。また、音全体が密集して継続した音量で鳴っていても実際よりも大きく感じます。
この人間が感じる音の大きさを表示するのがラウドネスレベル(LKFS/LUFS)です。
ボクはチェックするのにiZotopeのInsightを使っています。注意してみるのは真ん中の平均値です。
ラウドネスレベル(LKFS/LUFS)はだいたい「-12」〜「-13」あたりを目安にしています。ピアノソロなんかになると「-15〜-16」くらいで落ち着くこともあります。
レベルだけを頼りに調整していると、音数が少ない音源はとてつもなく大きな音に感じてしまいます。当たり前の話ですが、数値でなく必ず自分の耳でチェックですね。
ラウドネスレベルがこのあたりだと、音圧の高い曲が多いAudiostockの作品の中では音量が小さく感じるかもしれませんね(笑)。売ることを考えると「音が大きく感じる」ほうがわかりやすくて売れそうですが、実用的ではありません。
YouTubeやSpotifyではラウドネス基準値に沿って音を均一化しているからです。
YouTubeでは一般的にラウドネス基準値はおおよそ「−13」(spotifyは「-14」くらい)といわれています。パンパンに音圧を上げた波形がノリのようになっているものなど、ラウドネス基準値より大幅に音が大きいものは音量が下げられてしまうことがあります。利用者が本来意図したイメージでなくなる可能性があるということですね。
均一化されているのがハッキリわかるのは「−10」以上のレベルからと思います。ラウドネスレベルが「-5」とかの音源になると、明らかに音が小さくされているのがわかります。
ただ、注意しないといけないのは、YouTubeでは音圧レベルの高いモノを小さくしますが、低いレベルのモノを大きくはしてくれません。もともとの音源の音が小さいと小さいままです。Spotifyはある程度ノーマライズしているとも聞きます。
ラウドネス基準値は、あくまでYouTubeやWeb配信、放送レベルの話なので、音源を結婚式のイベントなどで使用する分には気にする必要もありません。ちょっと前のCDなんかだと「-5」とかのレベルが平気でありましたから...。もしかしたら、AoudioStockで音圧が高いモノが多いのは、利用しているクライアントはそういう人が多いのかもしれませんね。
いずれにしても、きっちり音楽を作っていれば、無理に音圧を上げる必要も無いのですが...再生装置のヴォリューム上げてください(笑)。
「ラプトル」解説
最後に今回のクリップ、「ラプトル」について。GadgetSonic 2018 に参加2曲目のクリップです。
映画ジュラシック・パークやジュラシック・ワールドでおなじみの「ヴェロキラプトル」。映画の影響か、知能の高い恐竜ということですっかり人気者となりましたね。映画の中のデザインは「ディノニクス」なのですが、今ではヴェロキラプトルといえばこちらのようですね。
今回の「ラプトル」もこの「ヴェロキラプトル」をイメージ、トラック数は10トラックを使用しました。
「ラプトルが狩りを行っている場面」をイメージした曲です。
ロイヤリティフリーの音楽として販売もしています(マスタリング処理済み)。
Kamata
集団で狩りをする、知能の高いの恐竜。
最初のステップを踏みながら軽やかに獲物に向かうイメージを、このガジェットで表現しました。見た目のチープな感じから、最も使わないガジェットと思っていたのですが、使ってみたら味のある存在感。今はとても気に入っています。
Mipitas
プリセットの中に結構使える音があって、重宝するガジェットです。曲中ではマリンバのような音で少しずつラプトルが増えてくる様子を表現しています。中盤と後半のPad系の音もこれを使っています。
Darwin
このガジェットのライブラリのピアノの音が気に入って結構使っています。曲中ではラプトルが攻撃するフレーズで使用しました。何度もシーケンスとして出てきます。ジャンプして飛びかかってくるようなイメージです。
Lexington
ラプトルに襲われる、獲物を表すフレーズで使っています。頻繁に現れる、「A、G、Bb、A、G」のフレーズ。また、これ以外にも走って逃げているイメージに地響きのようなベースの音を使って、合計2トラック。ガジェット for Macの方ではVSTやAUでも使えるので、使い込んでいきたい、お気に入り音源です。
Changmai
金属系の音を得意とするガジェットです。使い込んでいけば面白いことができそうですね。曲中では血が飛び交う雰囲気をこのガジェット使って表現してみました。
Racife
基本的なグルーブはこれで作ってみました。KORGガジェットにはグルーブ系のものが豊富にそろっていますので、いろんな物を試していくことでアイデアをカタチにして行きやすいですね。
Salzburg
中間部のピアノソロはこれを使いました。iOSヴァージョンのIvoryのライブラリーから「Ivory Coonsert Grand」を選んでいます。獲物を表すフレーズ、「A、G、Bb、A、G」の音で即興演奏してみました。ここで命が燃え尽きて、天国へと向かうイメージを作ってみました。
中間部では、このピアノの音にMapitasでPad系の音を重ねました。獲物の命をラプトルが吸収して、自分の命として同化していくイメージです。
Tokyo
シンプルな構成のガジェットですが、個性的で面白いプリセットが結構あります。エディットも簡単で好みの音に作り込みやすいですね。後半のほんの数小節の味付け程度に使用しました。低くて太いキックの音をこれで追加しています。
この記事を書いた人
[Music Freaks]
日々、ピアノを弾くことで生計を立てています。アコーディオンも弾きます。そしてひたすら音楽製作してます。人の多い場所と鈍感な人、苦手です。音楽と共に生きてくことは愉しい、すべての人がそう思えるような世界を考えていきたいです。
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