DAW、Digital Audio Workstationの略です。早い話が音楽製作ソフトです。普通はひとつあれば充分なのですが、ボクは自称、DAWオタクなので作る曲や気分によって、この音楽製作ソフト通称DAWを数種類、使い分けています。そんな中でも最近入手した、「音楽製作に特化した」音楽プロデューサのための音楽ツールというコンセプトのDAW、「WaveFrom」をご紹介します。
まずは使ってみる
とりあえず、ハイライトビデオをご覧下さい。
なんか凄いことができるんやな、でも一回見たくらいではようわからんな、というボクと同じ感想を持った人のために、ビデオで紹介しているようなことをする以前の、まずは最初の最初、基本的な使用感の印象から書いてきます。
慣れると新鮮で愉しい
まず「設定」で日本語表記にしてフォントを手書き風にして、スキームは明るい色にしたら印象がかなり変わりました。
この状態で起動したら、変更したフォントとスキームの状態で立ち上がります。なんかすごく愛着わきます。
いままでのDAWと比べて、いろいろと操作方法は違いますが慣れると新鮮で愉しいです。難しいことを考えず直感的に使えるところがイイと思います。だいだいいろいろいじっているうちに操作方法はわかってくるのがですが、独自のインターフェースのため戸惑ったところが何度かありました。
メニューブロック
新規のソフトウェアはメニューバーの項目をひととおりチェックするとだいだいのことはわかるんですが、Waveformを立ち上げてもメニューバーにはまったくメニュー項目がなくWaveformとしか表示されません。
どうしたらいいんだろう?と思っていたら、左下にメニューブロックがありました。ここでいろいろ選択できます。
マスタートラックは?
ミキサー画面にマスタートラックがありません。右下にコントローラーとマスタートラックが表示されています。マスタートラックにプラグインをさすときはここにドラッグします。マスタートラックが独立しているので、最初は戸惑います。
追記:
この記事を書いてから「マニュアル」をちょっと見たら(先に見なさいって?)、楽曲製作中の操作はミキサーではなく出力パネルをメインに考えているようです。確かに「出力パネル」で見るとマスタートラックとの関連も縦一列でわかりやすいですね。
トラック入力の選択
midiもAudioも同じトラックを使用します。入力を切り替えることで、それぞれmidiかAudioかを選択したことになります。
プラグイン、midi音源もこのトラックで選択するのですが、トラックでmidi入力をする機器を選んでいないと音は鳴りません。初期設定で設定したからOKではないんですね。
入力設定したトラックがmidiコントロール可能となります。ひとつの入力から選べるのは一度にひとつのトラックだけ。同じ入力からは複数のトラックは選択できません。
最初ちょっと操作に戸惑うところがあっても、慣れれば余計なことを考えず音楽製作に集中できそうな感じがしました。
たとえば、複数のトラックをひとつにまとめるのも簡単です。
このように最下部に現れる項目で「情報を確認」していくことになります。コツさえつかめば、ある意味全くマニュアルなしで大丈夫な感じですね。
ボリューム、パンが反映されない
トラックを最初に追加した初期の状態では、ミキサーに「ボリュームとパン」のプラグインが入っています。通常、「ボリュームとパン」はミキサーと一体化しているという先入観ですが、このソフトではこれもプラグインになります。おそらく後述するすべてをラックモジュールでコントロールできるようにするためと思います。
初期設定ではミキサーの「ボリュームとパン」がmidiに反映されないようになっています。メニュー項目横の情報部分にある、「midiベロシティに適応する」というところのラジオボタンにチェックを入れます。これで midi情報と「ボリュームとパン」のプラグインを連動させることができます。
「ボリュームとパン」のプラグインは一番最後に入れないとフェーダーを動かしても変化しません。シンセ音源を入れたら、音源はトラックの一番上に移動するようにします。プラグインでエフェクターをさしていくときも「ボリュームとパン」を常に最後に持っていきます。最後に持っていかないとと「パン」が反応しないのです。
*プラグインを追加するときは「+」で追加するのではなく、「ボリュームとパン」のところを右クリックして追加していくと上に追加されます。
そのほか、ミキサーのレベルメーターを反映させるときも同じようにラジオボタンでOnにする必要があります。そしてこのプラグインは「ボリュームとパン」のさらに後ろにささないと正確な表示をしませんので注意が必要です。「+」でエフェクターを追加するときは注意が必要です。
ミキサーを簡素化するためなのか、もしくは「ボリュームとパン」「レベルメーター」をプラグイン化することで、後述するラックを作るときには便利という発想かもしれません。
Aux (リバーブ)トラックを作る
「Aux Send、Return」も「ボリュームとパン」と同じようにミキサー内にはありません。なので「Waveformプラグイン」の中から追加します。
- トラックを追加
- リバーブプラグインをトラックに追加
- Aux Returnをトラックに追加
リバーブを送りたいトラックに「Aux Send」のプラグインをさします。
Aux Sendは自動的にBus1(通常は最初に作ったAuxトラック)が選択されます。
ラックモジュール
冒頭のビデオにもありましたラックモジュール、何じゃこりゃ?と思った人もいるかもしれませんが、シンプルで使いやすいので活用して欲しい機能です。
音の流れを視覚化
Waveformには後述しますが多彩なプラグインが同梱されます。これらはVST、AU対応で他のDAWでも使用可能です。それ以外にもWavefrom固有のFM音源やサンプラー、エフェクターがあります。これらをすべてを組み合わせてラックモジュールを作ることができます。
通常のプラグインや音源をトラックに直列にさしていくというよりも、ラックモジュールではルーティングなどが自由にできます。LRステレオにフェイザー、L側だけディレイなど、このラック内で簡単に設定できます。ここで作ったものはラックモジュールとして記憶させて他の曲でも使用することができます。
完成したラックはミキサーのトラックに挿入して使うことができます。常に使う設定などはラックにしてしまうと作業効率が上がりますね。
またマルチティンバー音源はここでパッチを組んで、各トラックに出力してしまうほうが楽ちんかもしれませんね。
Stylusを4つのトラックそれぞれにアウトしてみた図です。
アナログ的な考え
このラックモジュールはハードウェアでやっていたことをパソコンの中で視覚化したものでしょうか。それぞれの機材にケーブルをルーティングして音を作っていく発想ですね。視覚的にもわかりやすいですね。
作ったラックモジュールはひとつのトラックの中で管理できます。トラックが視覚的にもプラグインでゴチャゴチャしません。サウンドの調整とミックスなどの調整が個別になることで、作業効率が上がるのではないかと思います。
個性的なプラグイン
Waveformには3つのグレードがあります。そのグレードによって付属のプラグインも変わってきます。 そして、このプラグインはWaveformだけでなくVSTやAUに対応しているので、他のDAWでも使用することができます。
新開発の「Collective」
Waveformのために今回新しく開発されたシンセ音源です。600以上のプリセット。プリセット検索機能で目的の音を素早く探せます。
Organ、Flute、Vintage、を選んでメロトロンの音を探し出しました。
これは「フィルター」のエディット画面。音色のエディットも細かくできます。
早速、Collectiveだけで、ごく簡単なpad系のパターンを作ってみました。
追記:
Waveform用に開発されたはずのこの音源ですが、プロジェクトを立ち上げたときの読み込みにものすごく時間がかかります。これを4つさして作った上のパターンは、再度立ち上げて読み込むのに「笑えない」くらい時間がかかりました。Macのレインボーマークが回り続けます。最悪なときは起動せずに終了します。
それはもう、モチベーションが下がってしまうくらいです。
LIVEでCollectiveを4つさしてみましたが、そんなに読み込みに時間はかかりませんでした。なぜかWaveformとの相性は悪いようです。ちょっと気に入りかけていたシンセだけに残念な結果です。*とりあえずWaveformではとうぶん使いません、他で使おうと思います(*この問題ですが、VST使用にすることでアッサリ解決しました。このシンセはAU使用だと問題が起こるようです。Macで利用されている方はご注意下さい)。
ヴァージョンアップで改善すればイイのですが...
Tracktionに問い合わせたところ、現在このバグは修正中ですとのことでした。それまでMacでAUプラグインを使っている方は、VSTバージョンのほうを使用して下さいとのことでした。
Melodyne
MelodyneはAudioをmidiのように扱える凄いソフトです。ボクはこれのStudioをすでにもっていてます。まだテスト確認勉強中なので、後日レビューしたいと思っています。これだけで記事3回分は書けそうです。ここ最近入手したソフトの中でもダントツに凄いです。
WaveformにはこれのEssental が付いています。Essentalはシングルノートのピッチの補正など基本的的な機能のみですが、ここから差額を払えば上位版にアップグレードできます。
このMelodyneをプラグインとしてではなくARA機能、つまりWaveformの機能の一部として使えます。Waveformを使い慣れたら、これはすごく便利な機能と思います。
追記:
2017/9/20 現時点でボクの環境ではMelodyne StudioのARA機能が全く使えません。普通のプラグインとしてしか使えません。使用環境はMac OS Yosemite 10.10.5です。その後、最新のOS Sierraでも試してみましたが全くダメでした。現在、日本代理店のMedia Integration とTracktionの両方に問い合わせ確認中です。Melodyneの開発メーカー、Celemonyにも問い合わせましたが、原因はWavefromだろう(苦笑)という返事でした。
2017/9/23 ARA機能ですが、Media Integration でもMelodyneのEdit画面が現れないことが確認されました。ただ、CelemonyがOS 10.11で正常動作しているという返事をしてきているので、再度、Celemonyに事実確認(なぜ正常動作しているのか!?)をしています。
2017/9/27 問題が解決いたしました。コチラの記事をご参照下さい。単純な初期設定の見落としでした。
16種類のエフェクター
真ん中のグレード、PLUSになると16種類のエフェクターが付いてきます。Pro-Qっぽいイコライザーも付いています。もちろん全部のエフェクターをほかのDAWで使用することも可能です。16種類のエフェクターは以下です。
- Equalizer
- Compressor
- Reverber8
- Delay Studio
- Stereo Delay
- Tape Delay
- Crossover
- Limiter
- Gate/Expander
- Ducker
- Flanger
- Crusher
- Chorus
- Bus Compressor
- Phaser
- Auto Filter
イコライザーです。見た目はかなりPro-Qっぽいですね。このイコライザーはモノラルモードなのでモノラルのAoudioファイルで使用するのが良いと思います。ステレオoutシンセ音源の場合はステレオ対応のイコライザーを使用した方が良いと思います。
Biotek
一番上のグレード、ULTIMATEになるとBiotekというシンセ音源が付いてきます。Biotek単体だと¥24800、つまりULTIMATEと同じ価格。この音源狙いなら、ULTIMATE買い一択でしょうね。
ちなみにボクは値段が同じなので、最初、間違ってBiotekのほうを注文してしまいました(笑)。商品見たときは焦りましたが、未開封のままだったのでそのまま交換してもらえました。ご購入の際には、くれぐれもお間違えの無いようにー♪
この音源もこれだけでまるまる記事が書けそうです。後日また使用感など書きたいです。
Raspberry Pi に対応
Waveformの中で最も注目したい機能が、Raspberry Piへの対応です。この部分に触れている日本の記事が少ないのですが、「注目のもの」と「人気のもの」とは別物なんでしょうかね。
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)とは
通称「ラズパイ」とよばれているイギリスで開発された、ARMプロセッサ搭載のシングルボードのコンピュータです。現行モデルのPi 3は、1.2GHzのクアッドコア。見た目は手のひらサイズのオモチャみたいですが、れっきとしたコンピュータです。
このラズパイにWaveformが対応しています。ラズパイ用に別にアカウントもとる必要が無く、Waveformユーザーならこのラズパイ版も使えるということですね。
ボクはこのラズパイを持っていないので使用感などレビューはできませんが、詳しく調べてまたレビューしてみたいと思っています。海外のレビューとかでは、おおむねPC版と同じ事ができるみたいな感じでしたが。
専用のオーディオ・インターフェースも
NAMMでWaveform開発者のJulian Storerさんが熱く語るビデオです(日本語字幕なし)
ここではRaspberry Piの専用のオーディオ・インターフェース・ボードの開発をしているとの事(4:30あたりから)にも触れています。専用ボードなので様々なメリットがあります(音質、レイテンシーなどの改善)。今後の対応がとても待ち遠しいところです。
作曲支援機能
ボクは作曲もアレンジも、その行為そのものが愉しくてしょうがないので、それを他の人に代わりにやってもらおうと思わないし、ましてやコンピュータにその楽しみをとられてしまうのも...と思っていました。が、自分の中にないフレーズや変則的なパターン生成など、エレクトリック・ミュージックでは面白いことができそうですね。
ただ、今のところ積極的に活用しようという感じでは無い機能でしょうか。〜ここを期待していた人スミマセン〜
作曲支援ツールとしてLiquid Musicというプラグインも持っていますが、使わずそのままなのです。作曲支援ツールに関してはいずれまた、よく使い込んでその価値がわかったから、Liquid Musicと併せてレビューしてみたいと思います。
Waveformの感想
いろんな機能、プラグインがてんこ盛りで、コンテンツのほとんどが「後日また」みたいになってしまいました。それくらいひとつの記事にまとめるのには無理がある、多様性のあるソフトです。
また冒頭のビデオでも紹介しているように、従来にないクリップの編集機能、アレンジ機能、DAWそのものでLFOのコントロールとか、さわればさわるほど機能てんこ盛りです。
後日また書こうと思っていいるコンテンツ
- Melodyne
- Biotek
- Raspberry Pi
- 作曲支援機能
全体の印象としては、エンジニア向けではなく音楽クリエイター向けという感じです。立ち位置はLive やReasonなんかに近い(音楽クリエイター向けという意味で)かもしれませんが、特色というかキャラクターが全く違います。とりあえずデモ版がダウンロードできるので、それで自分に合うかどうか試してみてから購入(お得なULTIMATEが断然お薦めです)されるのが良いと思います。
Waveform デモ版のダウンロード(Tracktionのサイトにてメール登録が必要です)
また細かい機能や便利なところは、気がついたら書いていきたいと思います−♪
追記:
Waveformの開発メーカー「Tracktion」は、他にも先日紹介したシンセ音源Waverazerを扱っています。かなり面白い音源ですので、コチラの記事も併せてお読み下さい。
さらに追記:
この記事を書き終わったあとにWaveform関連の記事を検索していたら、DiGiRECOさんのものすごくわかりやすい記事を発見しました。記事の構成力はさすがプロです。Vol.2の記事ではボクが先送りした「作曲支援機能」についてもふれられています。興味ある方はご参照されては如何でしょうか。
使えば使うほど独自の発想が面白いソフトで 、最近ドップリのめり込んでします。最初使いにくいな。。。って思っていたところも、このDAWの特色みたいなのがわかると使いやすくて愉しいです。そのあたりはまたブログでレポートします。
この記事を書いた人
[Music Freaks]
日々、ピアノを弾くことで生計を立てています。アコーディオンも弾きます。そしてひたすら音楽製作してます。人の多い場所と鈍感な人、苦手です。音楽と共に生きてくことは愉しい、すべての人がそう思えるような世界を考えていきたいです。
アナタにお薦め
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