JASRACがなぜこんなに嫌われているか不思議でしょうが無い...と思うのは関係者だけです。一般的には「嫌われて当然」が定着しています。実際、JASRACでの検索ワードで上位が「クズ」です。とにかく何をやっても一般的に嫌われてしまうJASRAC。なぜこんなことになっているかを考えてみました。
悪口噂話は蜜の味
「JASRAC憎し」の意見に対して、どれだけ音楽関係者が「デマやでたらめ」の思い込みを覆すために懸命に説いて回っても、いったん広まってしまった「悪」のイメージはぬぐい去ることが出来ません。
ある程度理解力のある頭の良い人でも、著作権に興味が無い一般の方々はJASARACが悪の組織と信じて疑いません。
とあるピアノラウンジのお話
ちょっとここで、知り合いのピアノラウンジのお話をさせて下さい。
このお店はJASRACと契約していないために著作権の切れたクラシックやジャズの曲しか演奏できません。「契約すればいいじゃん」と思う方もいるでしょうが、営業して20年以上になるお店ですので今から申請すると、たとえクラシックしか演奏していなくても、10年前までさかのぼって支払うことになるようなのです。これはクラシックしか弾いていないという証拠が無いためにそうなるようです。
逆に言えば、管理楽曲を弾いたという証拠も無いのでJASRAC側も請求できません。しかし新たな契約を結ぶ場合は、上記のようなことになるようです。
なので、このお店は今後も著作権切れの曲しか演奏しないという方針で営業されています。
お客さんの会話
で、このお店で演奏していたときにお客さんからリクエストが来ました。リクエストいただいた曲は著作権が切れていない曲なので、演奏できないことをスタッフが説明しました。
そうすると今回の音楽教室とJASRACとの裁判、そしていかにJASRACが横暴で無茶苦茶なことをしているかということで話が盛り上がりはじめました。酒の席ですし、結構な盛り上がりを見せてました。
丁度、ピアノの横のお席だったので、お客さんが私にも直接話しかけてこられました。
そこで今回の裁判についてわかりやすくお教えすべきと思い、
- 学校の教育現場では無料
- 徴収対象の音楽教室は楽器店直属の営利目的
- 海外の教室では支払っている
- 話し合いを拒否して裁判に及んだのは音楽教室側
- Y社自体がJASRACに楽曲信託しているので、実はあまり損しない
といういうことをわかりやすくお話しししました。
すると「そうなんかー!そんなこと誰も教えてくれんかったなー」とひとりが言って、「そんな事実があったんか!」と全員が納得してくれました。が、その後、いままでの盛り上がりが急速にしぼんでいきました。
場のしらけた空気...
すぐにそれに気づいたスタッフが、別の話題で盛り上げて空気は元の盛り上がりを見せ始めました。
悪の組織、JASRACの正体
そこで気がついたのです。
本当はJASRACが悪であろうが無かろうが、みんなどうでも良いのです。
世の中には手に負えない悪の組織があって、しかし我々の実際生活には何の支障も及ばさない、そんな奴らが世の中に存在する。そう信じて言葉でたこ殴りにすることでストレス発散しているのです。
人が見たいもの
著作権というなじみのないもの、その仕組みもシステムも一般人にはなじみが無いために、何か悪いことをしてるといわれると「そうかもしれない」となります。
逆にどんなに悪いことをしていても、イメージ操作でどうにでもなることもあります。泥棒をしているのを明かされずに警察にしょっ引かれている若いお母さん。周りからすれば、子供から引き離されて「助けてー」といっている母を無理矢理連行する国家権力。「子供から母親を奪うんか!」と大衆はこのお母さんに同情します。
JASRACというのは作曲から作品の著作権を預かって管理しています。だから踏み倒しのような泥棒に対して抗議をします。悪質なケースには法にも訴えます。しかし、訴えられた側は泥棒行為を行っていたにもかかわらず、子供から引き離されている構図を作って「助けてー」と叫ぶことで、一般人の同情を誘います。
著作権などわかりにくいことも多いですし、音楽教室との裁判においては(これは何度も言いますが、音楽教室側が話し合いを拒否して訴えを起こした裁判で、その結果惨敗)法解釈などがややこしいために、料金の値上げから拡大解釈(誇大妄想的)までして「子どもの可能性を奪うんか!」というイメージを作って、目くらまししています。
マスコミによる煽動
では、なぜ常識的な行動をしているJASRACがここまで非難されるか。
それは、ふつうでは面白くないからです。
当たり前のことをしている組織が訴えられて、その結果、当たり前の判決が出たでは「ネタ」として面白くないのです。マスコミは真実を伝えることでは無く、大衆が求めるものを提供します。それは過去からずっと繰り返されてきたことです。
大衆は自分に被害が及ぶことない、「悪人」をたこ殴りしたいのです。JASRACはマスコミにとってはものすごく美味しいネタで、今後もこの美味しいネタを手放すことはしないでしょう。そしてこれは一個人のSNS発信者にも同じ事がいえます。
私たちが求めるもの
とあるインチキ占い師から聞いた話です。お客さんに対しての効果のあるセリフは、さんざんネガティブ要因をかまして
アナタは悪くないんだけど、
名前がー
先祖がー
部屋の間取りがー
とかいって、改名をさせたり、仏壇を買わせたり、水晶や掛け軸などを買わせます。
私たちが求めているもの、それは「自分は悪くないという免罪符」。今の自分から逃げ出すための免罪符が必要なのです。何かを強烈に批判している人をよく観察してみて下さい。彼らはその先に自分の免罪符を求めていることがほとんどです。
だから、売れない作曲家や仕事の無い演奏家は自分自信のマネジメント能力低さを認めずに、その代わりになる免罪符を求めています。演奏会するのにお金がかかる!JASRACのせいだ!ただでさえ大変な演奏活動をしているのに、あいつらは演奏家を殺すつもりかー!
いやいや、生きてるだけで、空気吸ってるだけでお金かかりまっせ...
そして日常に不満を抱いている人たちは、自分に被害の及ばない相手に対して怒りをぶつけます。あんな極悪人がいるなら自分はまともだ!極悪組織の連中と比べて、私はなんと清貧に生きているのだろう!
世の中にはとてつもない悪人が存在するのは紛れもない事実です。しかし私たちが知っている悪人や悪の組織の正体は、案外、私たちの心の不満が作り出した幻想かもしれません。
そうならないために、
深く自分自身を見つめていきたいです。
自分自身のなすべき事を
日々、研鑽して、
心が曇らないようにしたいものです。
この記事を書いた人
[カミデタカシ]
日々、ピアノを弾くことで生計を立てています。アコーディオンも弾きます。そしてひたすら音楽製作してます。人の多い場所と鈍感な人、苦手です。音楽と共に生きてくことは愉しい、すべての人がそう思えるような世界を考えていきたいです。
YouTubeチャンネル /// KAMIDE’s Music Freaks
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