大容量の最近のプラグイン音源。ほとんどはファイル格納の場所を指定できることが多いですが、一部のプラグインではライブラリフォルダの決まった場所にしかおけない物があります。以前のヴァージョンのLogic X 拡張音源もそうでしたね。
こんな時に活用するのが「シンボリックリンク」です。シンボリックリンクを使って、移動できないフォルダを外部ディスクの保存して、アクセスできる方法を解説します。
「エイリアス」との違いも最後に書いています。
シンボリックリンク
私はMacユーザーですので、今回のこの記事もMac限定の解説ということでよろしくお願いします。
PCユーザーの方、スミマセン。
概要
で、シンボリックリンクとはなんぞや?って話になるのですが、ザクっていってしまうと、
どこでもドア
みたいなもんです。え?ザクッとしすぎですか?その仕組みとかアカデミックな内容は、頭のいい人が書いた記事でも見てもらうとして、簡単に説明します。
ここにソフトウェアが読み込む専用フォルダあります。これは、起動ドライブの「ライブラリ」など特定の場所にしかおけないフォルダです。これを外付けのディスクに移動します。そして、偽物のフォルダを作成して元の場所「ライブラリ」に起きます。ソフトウェアはこのファイルが偽物であることに気づかずに通常取りアクセスします。
自由になった囚人
言い換えれば、
独房に閉じ込められた囚人が密かに脱走して自由の身となります。
自分のホログラム映像を独房に写します。そして、あたかも自分が独房にいるかように欺いている、という状態。
監視している側(ソフトウェア)は、偽物を本物と同じように思っていて通常とおなじようにやりとり(アクセス)します。この偽物と本物をつないでいる「糸」がシンボリックリンクです。
フォルダを作成
シンボリックリンクを作るためにはシンボリックファイル、つまり偽物が必要です。
準備
まず、試しに「独房(A)」というファイルをライブラリフォルダの中に作ってみます。さらにこの中に「囚人(B)」というフォルダを作ります。
この囚人というフォルダを外付けディスクに移動(コピー)して、「囚人(Bコピー)」をつくります。もともとあったライブラリの中の「独房(A)」の中にある「囚人(B)」は削除します。
これで準備完了です。
作成
Macのヘッドメニューから「移動」−>「ユーティリティ」を開き、ターミナルを起動します。
ターミナルに「ln -s 」を記述します。lはL の小文字。文字列は「ln(半角スペース)-s(半角スペース)」です(めんどくさい方はカギ括弧内の文字をターミナルにコピペしてください)。
「ln -s 」
次に外部ディスクにコピーした「囚人(Bコピー)」をターミナルにドロップします。
そして次に「独房(A)」をターミナルにドロップします。
最後にリターンキーを押します。
すると
「独房(A)」中に「囚人(Bシンボリック)」が現れました。この「囚人(Bシンボリック)」は「エイリアス」のような矢印マークがついています。
「囚人(Bコピー)」フォルダの中にいろんなものを入れてみたら、
コピーの「囚人(Bシンボリック)」フォルダも同じようになっています。逆に「囚人(Bシンボリック)」フォルダの中をいじっても元の「囚人(Bコピー)」フォルダに反映されます。
これで本体ファイルとシンボリックリンクでつながったシンボリックファイル(偽物)が完成しました。
このようにライブラリなどから出すことが出来ないフォルダ(囚人)を外付けディスクにコピーして、あたかもライブラリの中に存在しているかのように振る舞うのが「シンボリックリンク」です。
注:High Sierra以降、シンボリックが使えないものがあります。具体的には、ライブラリ → Audio → Plug-Ins → Componentsの中にあるAUの中にファイルを格納するタイプ。例えば、ThenatanのPOIZENという音源はAUプラグイン内のResourcesフォルダにファイルを格納します。ノーマルで22GB、Expansionsファイルを含めると60GBにもなるので、Resourcesフォルダにシンボリックリンクを使いたいところなのですが、再起動したときにリンク切れを起こします。リンク切れを起こすとDAWそのものにPOIZENという音源が表示されなくなります。ただ利用できないのはこういった一部の音源のみで、深い階層にファイルを格納しない、Omnisphere等は問題なくシンボリックリンクを利用できます。
エイリアスとの違い
ここまで読んだ人は、エイリアス(ショートカットキーのコマンド+L)と何が違うの?と思う人もいるかもしれません。矢印マークも同じようについています。
似て非なるもの
エイリアスもフォルダの複製ですが、こちらは本体ソフトウェアを騙すことが出来ません。ソフトウェアは「エイリアス」をコピーと認識していて、本物のフォルダとして「やりとり」してくれないのです。
読み込みは可能ですが書き込みは出来ない、なんてことになったり、ソフトウェアの更新などでの音源ファイルのアップデートが出来なかったりします。本物と同じように騙してアクセスさせるためには、シンボリックシンクでつながった、シンボリックファイルが必要となるのです。
そのためにひと手間かけて作るんですね。
相違点
☆エイリアス:ソフトウェアからのファイル情報の読み込みはするが、変更情報に関してはエイリアスを通して元ファイルにはアクセスできない。したがってアップデートなどの更新が出来ない。
☆シンボリックファイル:ソフトウェアは元ファイルと同じようにアクセスする。
活用方法
シンボリックリンクの活用方法を実際の例で示します。
すべてのパソコンで編集作業
iCloudやDropbox、Amazon Drive等のクラウドディスクに元ファイルを置いて、シンボリックファイルをライブラリに置くという方法。ライブラリの中にある情報を複数のパソコンで編集作業をするときに便利です。
たとえば、MarsEdit3(最新版の4ではシンボリックリンクが使えません)をブログ記事更新に使っているのですが、ライブラリーー>Application Supportの中にある”MarsEdit”というフォルダには、書きかけの記事がここに保存されています。
これをクラウドディスクに保存してシンボリックファイルを作って、各パソコンのライブラリに入れることで、すべてのパソコンが同じようにな状態になります。書きかけの記事をどのパソコンからも続きを書くことが出来るのです。
このように、ネットにつながったパソコンであれば、ライブラリの中の情報をどのパソコンからアクセスしても同じ状態にすることが出来ます。
VSTの拡張の場合
VSTやAUプラグインの中にはプラグインファイルそのものを開いて、その中のフォルダに追加音色(mseファイル)を格納するものもあります。
まずはAUプラグインを開きます。
AUプラグインを右クリック−>「パッケージの内容を表示」で開きます。
その中にContentsというフォルダがあり、さらにその奥にResouseというフォルダがあります。ここに拡張音源を格納します。総容量が50G程あるのでシンボリックファイルの登場です。
上の要領でシンボリックファイルを作成しました。外部ディスクに保存した、大量の追加ライブラリ(mseファイル)がシンボリックリンクを通じて表示されています。
外部ディスクに50Gの拡張音色の収まったResouceフォルダを置いて、AUプラグイン内部にはシンボリックファイルを置きました。プラグイン自体がライブラリの中のPluginフォルダの中にしかおけませんので、シンボリックリンクを活用することで外部ディスクに拡張音色を保存することが出来ます。
また、AUとVST(もしくはVST3)の両方で使いたいときに、各プラグインに50Gの拡張音色を格納すると100Gになってしまいますが、シンボリックリンクを利用すると外部ディスクの50Gのシンボリックファイルを利用することでOKですね。
Omnisphereライブラリ
その他、Omnisphereもライブラリの「Application Support」にしか音源ファイルを収納できないので、シンボリックリンクを利用します。MIのサポートページに「エイリアス」で対応できるように書いてありますが、前述したように「エイリアス」では音源ファイルのアップデートが出来ません。
Omnisphereはライブラリのアップデートを頻繁にするので、シンボリックリンクでないとリンク切れを起こしたり、ファイルの更新が出来なかったりします。
Logic Xのライブラリ
Logic Xも以前まではライブラリの「Application Support」の中にしか拡張音源のファイルを置くことが出来なかったので、シンボリックリンクを活用していました。今では外部ディスクに置いて場所を指定できるようにもなりましたが、以前のままシンボリックファイルで使用しています。
これらは実際は外部ディスクにあるものを、起動ディスク内にあるのと同じように認識させています。
まとめ
手順をまとめると以下のようになります。
- ターミナルを機動
- 「ln- s 」をターミナルに記述(コピペ)
- コピーしたい元のフォルダをターミナルにドロップ
- 移動先のフォルダをターミナルにドロップ
- リーターンキーを押す
これで完成です。コピーして作ったシンボリックファイルと本物のファイルは、別の場所に移動してもシンボリックリンクが切れることはありません。コピー元のファイルがなくなるとシンボリックリンクも切れます。
それと大事なことですが、「エイリアス」では出来ない大事な情報のやりとりが出来るようになる、というのもシンボリックリンクの特徴です。「エイリアス」とは似て非なるものなのです。
このようにシンボリックリンクは、ファイル容量が大きい、移動できない拡張音色を外付けハードディスクで利用するときにとても便利です。是非ご活用下さい。
この記事を書いた人
[Music Freaks]
日々、ピアノを弾くことで生計を立てています。アコーディオンも弾きます。そしてひたすら音楽製作してます。人の多い場所と鈍感な人、苦手です。音楽と共に生きてくことは愉しい、すべての人がそう思えるような世界を考えていきたいです。
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