2019年度、クリエイターEXPOに初参加しました。初参加して気づいたこと、自分自身の失敗などを綴っていきます。
クリエイターEXPOとは
(提供:リード エグジビション ジャパン株式会社)
さんざんのこのブログで綴っては来ていますが、クリエイターEXPOとはなんぞや?という人のために簡単に説明します。
クリエイターのための見本市
リード エグジビション ジャパン株式会社が主催しているイベントです。
クリエイターといわれる人たち、音楽家、映像作家、イラストレター、コピーライター、そういった人たちが自分の仕事を「売り込む」ための見本市です。東京ビックサイトで毎年開催される「クリエイターEXPO」は、4万に及ぶ各種業界の方が訪れてクリエイターとビジネス交渉します。
出展にかかる費用
出展費用は 14万円(2019現在)で、早期割引なら11万円(税別)です。出展費用は年々上がっているようです。2018年に申し込んだときは、確かもっと安かった(出展費用11万、早期割引8万)です。
その他、チラシ、ポスターなどの作成の費用、遠方から行く場合は交通費、宿泊費、食事代などの滞在費が必要となります。出展期間中、仕事をストップするなどしてフロー収入がマイナスになる分も加算すると、自分の場合は30万円くらいになりました。
一度申し込んでキャンセルした場合は、期間の有無を問わず3万円のキャンセル料、さらに開催2ヶ月前のキャンセル料は全額となります。
出展の為の準備
名刺やチラシ、パンフレット、背面の掲示するポスターなど自分を最大限にアピールするものを用意します。音楽家の出展であるなら、これ以外に音資料は必ず用意するべきです。音楽を聴けるようにする機器、試聴用のヘッドフォンなども必要です。
準備についての経緯は過去の記事に書いていますのでご参照下さい。
まずは失敗談
まずはクリエイターEXPO出展での失敗談を綴っていきます。
ブースの設営
ブース内に実物のアコーディオンを展示することにしました。これでインパクトを与えるつもりでしたので、当初考えていたポスターの制作はやめました。これが失敗でした。
まず来場者はブース内を見て回るとき、上しか見ていません。つまり壁に掲示されたポスターを眺めながら歩いていいるのです。声をかけて、始めてブース内のアコーディオンの存在に気づく人が大半でした。
また、インパクトを与えようと壁の掲示を手書きにしたのも良くなかったです。あまりにも素人臭かったようです(笑)。ちゃんとした音楽を作れるのかどうか、わかりづらいということですね。
声をかけて、音源を聴いてもらって、ようやく納得してもらうという、ひと手間もふた手間もかかる商談になってしまいました。
ターゲッティング
劇番音楽などの依頼を受ける、というのが当初の目的でした。 しかし、そういった需要はほぼなかったです。こういったイベントで企業が劇番音楽クリエイターを探すことはほぼ無いと思います。
よくよく考えてみると、劇番関係の作曲は制作スタッフの一員となるわけですから、信頼関係という実績の積み重ねで得られるものです。いきなり見ず知らずのものに受注するというケースはほとんど無いといって良いでしょう。
いずれにしても「仕事」の受注をもらいたい、という目的であるなら事前に調べてターゲッティングすべきでした。クリエイターEXPOの来場者が求めている音楽は大半がゲーム音楽関係でした。これは東京ビックサイトで開催されている、他のイベントとの兼ね合いでの来場者の傾向と思います。そのあたりをもっと考慮すべきでした。
また、初出展でもあったので、自分自身が音楽家であること(特に演奏家の部分)を知らず知らずのうちアピールしていました。商談の時に「演奏をお願いできますか?」という質問をたびたび受けてしまいました。これは楽器を展示してしまったのも影響していたようです。
チラシ配送サービス
出展前に主催者側より各種サービスが受けられます。私の場合、「チラシ配送サービス」というのを利用しました。出展者が制作したチラシを各業界の方に配送するというもの。チラシは出展者、数名分をひとつにまとめて各関係者、1000名に配送されます。業界関係者1000名、出版社関係1000名、合計2000名分をお願いしました。
これが私の場合、全く効果を発揮せず、お金を無駄にしました。
考えてみれば音楽クリエイターなので、チラシでの効果はあまり期待できないのは当たり前なのですが、初出展ということでやれるものはやってみようという感じでした。
ここにかかった経費でサンプルCDを業者プレスして、当日配布するほうが現実的と思いました。
先着無料音源
前述した、チラシ配送サービスで利用したチラシにも記載した、先着10名様への「ロイヤリティーフリーの音源無料進呈」。HPやクリエイター用のページでも宣伝しましたが、効果を発揮しませんでした。
「先着10名様へ無料配布」という呼び込みが全く効果を発揮していなかったのです。
これなら、JASRAC管理曲を含む利用制限をかけたサンプルCDを制作して配布したほうが良かったと思います。いわゆる「音のカタログ」として後日、ご連絡頂ける可能性が高いと思うのです。
次回への貴重なサンプルとしての失敗となりました。
出展者同士の雑談
過去に出展された、いろんな方のブログを拝見させて頂いて、やってはいけないことのリストに上がっていた項目、「出展者同士の雑談」です。
クリエイターというのはオタク傾向が強いので、機材や技術的な面で一旦話をすると盛り上がってしまって、話し込んでしまうことがあります。自分もついついやってしまいました。開場前に挨拶しておく程度と思っていたのですが、なにかと話し込んでしまうことがありました(笑)。
全く交流無しというのも、それはそれで問題があるように思います。実際、クリエイター同士でビジネス交渉が成立することもあります。このあたりの対策は後述します。
来場者の特徴
(提供:リード エグジビション ジャパン株式会社)
クリエイターEXPO出展に際して、「来場者の特徴」を知っておくことは結構重要です。自分の求めているものとのズレが大きいと成果につながりにくいです。
まず知っておかないといけないことは、来場者はクリエイターEXPOだけを目当てに来ているわけではないということです。
クリエイターEXPO開催時の東京ビックサイトでは、同時に各企業が最新テクノロジーで開発した技術や商品を展示発表しています。また同時開催している、AI・人工知能EXPOなどもあります。これらを目的に来た来場者が、ついでにクリエイターEXPOに流れてきている感じは否めませんでした。
なので、このあたりとリンクする部分をアピールすべきと思いました。音楽クリエイターならVR技術やAIテクノロジーとの兼ね合いで何か説明できるかもしれません。そこをつかみとして自分の音楽制作に引っ張ってみる方法を考えてみたいです。
仕事につながる企業
だいたいビジネス交渉につながる方は全体の2割に満たないです。これは来場者の中にそういう人がいるのが2割に見たないということと思って間違いありません。50人交渉できれば10人ですから、実際問題、まあ悪くない数字です。
ただ、2割の人と残り8割の人、同じ温度で接すると身体が持ちません。
これも開催2日目あたりから感覚でわかるようになってきました。
仕事につながりそうな人や企業は、早い内に具体的な話が出てきます。何が欲しいのか、何を求めているのかを割と早い内に提示してくれるのです。逆にそうじゃない系の人たちは、「何か面白いものを見せてごらん」的な態度が多いですね。
クリエイター
クリエイターEXPOの下見に来ているクリエイターがいます。自分の立ち位置を見極めるためのチェックをしている感じもしました。何人かお話ししている内に、ビジネス交渉する気はないという感覚はつかめてきました。自分を売り込もうとする人もいました。なので、話す内容を選んで時間を考えてお話しするようにしました。
ひやかし
クリエイターEXPOは入場料5000円となっていますが、前もってネットで申し込みすれば無料チケットが送られてくるので実質タダです。定年退職後の気晴らしに来ていると思われる人も混じっています。「いやー頑張って下さい!」と励ましてもらっても...と思うこともありました。
営業
こちらのHPを見てきたという人もいました。喜んで話をしていると、自社のPRを始めて、自社商品の宣伝をブログでして欲しいと頼まれました。帰って下さい...。
出展者のスタッフ
出展者のヘルプスタッフが展示ブースを周遊していることがあります。こういった人たちの中にはネーム札にVIPマークをつけている人がいて、ややこしいです。
お声がけしたら「音楽も映像も作ってるから!」とかいって 、ものすごくうっとうしそうに通り過ぎる人がいました。いやいやウロウロすんなよ...といいたいところです。
クリエイターEXPOの結果
お金と時間をかけて、クリエイターEXPOに出展して成果は出たのか。自分の場合、設営やターゲッティングの失敗はあったものの、成果はありました。
成果は予測不可能
当日交渉して、後日メールして、良い返事をくれた企業からではなく、メールなどのやりとりもなく全く想定していなかった企業から、いきなり電話連絡頂きました。ゲーム関係の音楽制作のお話を頂いたので、実績としてもわかりやすく今後の仕事の足がかりとなります。
良いお返事を頂いた企業からは、まだ連絡は頂いていませんが気長に構えています。初出展ということと音楽制作というジャンルの特徴上、即効に結果のでるものでもないですからね。
来場者の見極め
結局、どの企業が成果につながるかが、交渉の感覚ではすぐにわからないです。来場者の中で仕事につながる企業は2割ほどしかいなく、さらに仕事依頼を頂けるか見当もつかないという状態です。このあたりはほんとうに難しいところですね。
(提供:リード エグジビション ジャパン株式会社)
ただブースでお話ししているときの態度や人柄で、ある程度の事はわかります。将来仕事をする気のない人は、少なからず横柄で「俺様」のような態度をとります。こちらのことをその場限りの相手と思っているのでしょう。
反対に気持ちよくお話しできる人というのは、今後もこちらとの関係性を維持する気持ちがあるということと思います。
相手にこちらの持っているものが何か響けば、将来的には確実に成果につながると思いたいです。
来年に向けての準備
主催者側から、来年の出展ブース確保の案内が本年度の出店前からもメールできます。電話もかかってきます。出展中も高頻度で来年のブース確保の案内が場内に流れます。
その情熱的な催促と早割サービスの誘惑に負けて、来年も参加を申し込みました(笑)。ただ、角のブースのような良い場所はすでに押さえられていました。
ということで、次回に向けての今回の反省を踏まえて準備です。
ブース位置のチェック
(提供:リード エグジビション ジャパン株式会社)
ブースの位置は角がやはり強いです。正面以外に側面に展示できるということ、人の流れが側面と正面の2方向であることなどが上げられます。また角の入り口で人の流れが止まって中のブースまで流れない事があるので、角以外のブースが損をすることもあります。
今回、角のブースの確保はできませんでしたので、ブース位置を別の視点から押さえました。
前述したように来場者は壁の掲示ポスターを眺めながら歩いています。この目線が継続して流れるような位置のブースが目につくことが多い、ということに気がつきました。
つまり、試聴コーナのような出展ブースとは関係の無いスポットがそこに存在すると、来場者の目線の流れはブースから一旦途切れてしまうのです。連続して壁の掲示ポスターを注視してもらうためには、なるべくブースの空白がないところがベストなのです。
ということで、次回は壁一列に出展者ブースすべてが立ち並ぶところを選びました。そして角ブースの隣を押さえました。
ヘルプスタッフの確保
効率よく交渉するためにヘルプスタッフの必要性を感じました。ブースでのビジネス交渉中にも来場者へのチラシの配布、試聴音源への誘導などです。ヘルプスタッフがいれば、クリエイター同士でビジネス交渉になっているときでも、来場者へ目配りしてもらえるので機会損失を少なく出来ます。
ただ主催者側では、このヘルプスタッフの利用は公認していないようですね。暗に黙認しているようには感じられます。
サンプルCD制作プレス
イラスト関係のクリエイターの方は素晴らしい作品カタログを印刷されていました。これを見た人が後日、連絡してくる可能性を見越したものですね。
音楽関係でのカタログは音で伝える方が良いです。CD-Rのパソコン焼きではなく、きちんとした工場プレスものを制作すること。これはイラストレイターがパソコン印刷のレベルの作品カタログを配布しないのと同じ理屈ですね。
自由に音源利用できるサンプルCDをお渡しするのではなく、JASRAC管理曲を含む利用制限をかけた音楽を制作してプレスする。後日、制作依頼いただけるような工夫が必要ですね。
現時点での感想
さて、いろいろ書きましたが現時点の感想を最後に書きます。
リベンジマッチ
来年は本年度のリベンジの為に出展します。
たとえていうと、始めてのゲームに参加したものの、あたふたとまわりの勢いにまかれて終わってしまった、そんな感じが強いので、再度、状況分析して挑みます。
クリエイターEXPOのようなスタイルの見本市では、音楽クリエイターは他のクリエイターの方と比べて結果が出にくいジャンルと思います。そのためのひと工夫が必要と感じました。
出展のメリット
そしてお金をかけてクリエイターEXPOに出展するメリットがあるかどうかですが、仕事の幅を広げるという点ではあります。今回の反省点も踏まえて、来場者の傾向と自分が提供できるコンテンツをしっかり見極める、そこに絞って出展することで大きな成果が期待できると感じます。
かかる経費も個人のクリエイターからすれば安くないですし、成果が得られなければデメリットのほうが大きいでしょう。
漠然と妄想だけで出展しても、目に見える成果は得られることは少ないです。出展へのメリット、デメリットは結果次第ですので、良い結果が得られるように工夫をすることが大事と考えます。
次回の出展では、そのあたりを詰めていこうと思います。
この記事を書いた人
[Music Freaks]
日々、ピアノを弾くことで生計を立てています。アコーディオンも弾きます。そしてひたすら音楽製作してます。人の多い場所と鈍感な人、苦手です。音楽と共に生きてくことは愉しい、すべての人がそう思えるような世界を考えていきたいです。
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